通訳 wikipedia|無料辞書
通訳(つうやく)とは、
書記言語ではない二つ以上の異なる
言語を使うことが出来る人が、ある
言語から異なる
言語(例・英語から日本語)へ
変換すること。また、それをする職業そのものを指す場合もある。ただし、翻訳(という行為)と翻訳者・翻訳家という語の関係を見れば通訳者・通訳士・通訳人などと呼ばれるべきであるし、実際国語審議会などの公的文書ではそのように記載される。異言語間の仲介を果たすという意味で
翻訳と同列に語られる場合があるが、翻訳の対象は書記言語であり、技能的には全くの別物である。通常、翻訳者はTranslatorと呼ばれるのに対し、通訳者はInterpreterと呼ばれる。
国語審議会は2000年末に、通訳・翻訳の重要性を指摘し、次のように提案した。 「通訳は、高い母語能力と外国語能力、言葉の文化的背景を含む幅広い教養など高度な能力を要する専門職である。今後は教育を充実し、国際化に対応するための日本の人的資源として、高度に訓練された職業通訳者及び高い見識を有する通訳理論の研究者を養成することが望まれる。」
◆ 通訳の形式
通訳は、その方式や形態によって逐次通訳、同時通訳、ウィスパリング通訳など数種類に区分される。以下にその一般的な区分を示す。
◇ 逐次通訳 (consecutive interpreting)
話者の話を数十秒〜数分ごとに区切って、順次通訳していく方式であり、一般に通訳技術の基礎とされる。話者が話している途中、通訳者は通常記憶を保持するためにノートを取り、話が完了してから通訳を始める。そのため、後述の同時通訳と比べてほぼ2倍の時間がかかってしまうが、訳の正確性が高まるため需要は多い。
◇ 同時通訳 (simultaneous interpreting)
同時通訳は、話者の話を聞くとほぼ同時に訳出を行う形態であり、通訳の中でもいわゆる花形的な形式である。通例通訳者は、ブースと呼ばれる会場の一角に設置された小部屋に入り、その中で作業を行う事になる。通訳者の音声はブース内のマイクを通して聴衆のイヤフォンに届けられる。同時通訳作業は非常に重い負荷を通訳者に要求するため、2人ないしは3人が同時にブースに入り15分程度の間隔で交代する。多言語間通訳が行われる国際会議で特に多用されるが、多言語地域であるヨーロッパでは通訳の需要のほとんどが同時通訳である。
◇ ウィスパリング通訳 (whispered interpreting)
方式的には同時通訳と同一であるが、通訳者はブース内ではなく、通訳を必要とする人間の近くに位置して聞き手にささやく程度の声で通訳をしていく。自らの声やその他の音が障害となるため、正確な通訳を長時間行う事は非常に難しいとされる。高価な通訳設備の用意が必要ないため、企業内の会議などで使用される事が多い。
◆ 通訳者の種類
通訳者は、その能力や活動分野によって数種類に区分される。以下にその一般的な区分を示す。
◇ 会議通訳 (conference interpreter)
一般に同時通訳者と呼ばれ、同時通訳の技術を習得している。主に国際会議などで通訳を務める。エージェントに所属している場合は実力や経験年数による格付けが行われる。
正式な呼称は会議通訳者であり、同時通訳者というのは一般の人にもわかりやすくするための「通称」の要素が強い。その根拠の一つとして、逐次通訳者などという概念がないことが挙げられる。日本には、会議通訳者の職能団体は存在しないが、ヨーロッパではAIIC(国際会議通訳者連盟)やアメリカのTAALSなど、歴史のある団体がある。
◇ ビジネス通訳 (business interpreting)
表敬訪問、商談など民間企業内で行われる通訳をまとめてビジネス通訳と呼ぶ。日本では1990年代以降企業の国際的連携が拡大したため、需要が高くなっている。企業内で通訳者を独自に雇用する場合とフリーランスの通訳者を必要に応じて雇う場合とに分かれる。仕事内容は会場案内やエスコートや専門性の低い交渉など日常レベルのコミュニケーションを主とする場合が多い。通訳の対象者について行動するために随行通訳(リエーゾン通訳)とも呼ばれる。
来日した外国人アーティストやプロスポーツ選手に随行して記者会見やインタビュー、テレビ出演などでの通訳をはじめ、日常生活の世話やスケジュール管理なども行う事もあるが、芸能関係の仕事のほとんどはエージェントからの派遣は少なく、関係者のコネクションなどが多い。そのため、通訳者を目指し勉強をしていた人ではなく芸能会社の社員や字幕翻訳家が抜擢される事も頻繁にある。
◇ コミュニティー通訳 (community interpreting)
地域社会に住む外国人が多くなるにつれ、医療や福祉、教育、司法など様々の公共サービスの場での通訳が必要になってきており、それらを概してコミュニティー通訳と呼ぶ。会議の通訳などよりはるかに報酬が低いため、従来ボランティアで行われる場合が多く、通訳の質については全く保障されていなかった。しかしながら特に医療や司法の通訳は他者の人生を左右する可能性が高く、内容の専門性も高いため、通訳に際しての倫理規定の制定や、通訳者の質及び報酬を保証するための資格制度の必要性が投げかけられている。
アメリカやオーストラリアなど通訳者の国家資格がすでに整備されている国ではこの種の通訳がプロフェッショナルの仕事であるという観点から、公共サービス通訳者 (public service interpreter) と称されることがある。
◇ 放送通訳 (broadcast interpreting)
外国のテレビ報道などを訳出して視聴者に届ける通訳形態である。日本では
英語→
日本語の通訳が多く行われている。相手は一般視聴者なので、子どもから高齢者までの幅広い年齢層に、わかりやすい言葉で必要な情報をもらさず正確に伝える能力が必要とされる。
定時のニュースの通訳は放映後、通訳者が数回録画映像を目にしてから訳出するため「時差同通(時差同時通訳)」と呼ばれ、通訳と翻訳の中間とされるが、基本的には1回聞いただけで内容を理解する力が求められる。ごくまれではあるが突発的な事故や出来事のニュースを訳出する場合は外国での放映と同時に行うため、「生同通」と呼ばれる。
◇ 手話通訳 (sign language interpreting)
音声言語を手話に訳出する(あるいはその逆)場合も、書記言語ではないため通訳の区分に含まれる。
◇ 通訳案内業 (multi-lingual tour guide)
来日した外国人に観光地を案内したり、日本の社会や文化について紹介したりする職業であり、正確には通訳とは一線を画する。正式には「
通訳ガイド」といい、
国土交通省管轄の
国家試験に合格してライセンスを取得する必要がある。
◇ 自動通訳・機械通訳
非人間による通訳技術である。詳しくは
自動通訳を参照。
◆ 通訳のプロセス
通訳は起点言語(原語 the source language:SL)を音韻的に認知・受容 (audition) し、さらに語彙と文法による表層構造の理解(記号の解読 decode)および世界知識・背景知識・場の知識によって内包や外延をふくむ発言内容の深層構造の理解 (comprehension) に達し、その理解にもとづいて目標言語(訳出語 the target language:TL)へ転換(再記号化 encode)し、最終的な音韻表現として表出する (re-formulate) 行為である。
訳出する際には起点言語と目標言語とにおける、話者が伝えようとする内容に対しての忠実性(fidelity)・聞き手が得る内容に対しての等価性 (equivalence) を重視すると共に、文化的な差異なども考慮に入れねばならない。これはたとえば、長さをメートルからフィートに換算することも含まれる。
◆ 通訳者になるには
日本では通訳を含む語学に関する国家資格は、2009年3月現在、国土交通省管轄の「
通訳案内士試験」のみであり、通訳技能を判定する国家資格は存在しない。しかしながら、特定非営利活動法人
通訳技能向上センター(CAIS)が主催する資格試験は存在している。過去には、株式会社である
日本通訳協会が独自の資格試験を実施していたが、2008年11月の検定試験が試験日直前に中止され、その後、同年12月末日に同社の事務所を閉鎖することが同社のホームページ上で発表された。一部外国ではオーストラリアのNAATI(国家翻訳・通訳認定局)など、資格が整備されている。
上記の通り通訳に公的資格は無いが、プロとしての技能を身につけるには通訳スクールに行く事が通例である。受講に必要な語学レベルは、通訳訓練を行う為の語学力を高める基礎コースであっても非常に高く、英語の場合
TOEICで最低750点程度は必要とされる。しかし、通訳に必要な語学力は
TOEICで測れるものではないため、資格に関係なく入塾テストが課せられる。
また、最近では大学院などで通訳を理論面、実践面から学ぶコースが開講されている。しかし実際には大学院の授業だけで通訳者に必要な能力を身に付けるのは難しく、やはり大学院に通いながら民間の通訳スクールに通うのが一般的である。
◇大学・大学院における通訳教育
日本においても
日本通訳学会の創設や、外国語教育への通訳訓練法の利用が注目されるようになってから、大学学部・大学院で通訳のコースが開設されるようになったり、通訳・翻訳を専門研究分野とする専任教員も増加傾向にあり、大学院レベルでの研究指導も行われるようになっている。
しかし、その一方で、特に学部レベルで通訳教育に関しては、多くの場合、学生の語学力が不足しているなどの問題も抱えている。
日本通訳学会の行った調査によれば、これらのコースを担当している教員の98%が通訳の実務経験を有しており、その70%弱が10年以上の経験を積んだベテランレベルの実務家である。以下に通訳・通訳論・通訳研究を専門としている大学専任教員の一部を挙げる(2006年4月現在)。いずれの人物も現役も含む通訳者経験を有していながらも国内外で研究成果を発表している。
; 相澤啓一
・通訳 page1
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