一方、社会の真実をみつめることは、20世紀の日本の資本主義の発展を認識するという側面もあり、それは1930年代になって、藤村が幕末社会を描き出した長編『
夜明け前』や、秋声が集大成と言える『
縮図』を書いたように、必ずしも小世界にとどまらない傾向も存在したし、同時期の
プロレタリア文学の評論家の
蔵原惟人が、自然主義のリアリズムを発展させる〈プロレタリア・リアリズム〉を主張したような、社会性に目を向けるという方向性も生み出した。その点では、自然主義文学は、20世紀の日本文学にとって通過しなければならない一段階であった。