天竺・
震旦よりは本朝に重心を置き、発心譚・遁世譚・
極楽往生譚・
仏教霊験談・
高僧伝など、仏教関係の説話を集録。仏伝からの引用が多い。長明自身を含む隠遁者(
西行が有名)が登場人物の主体をなす。盛名を良しとせず隠遁の道を選んだ高僧(冒頭の玄賓僧都の話など)をはじめ、心に迷いを生じたため往生し損なった聖、反対に俗世にありながら芸道に打ち込んで無我の境地に辿り着いた人々の生き様をまざまざと描き、編者の感想を加えている。人間の心の葛藤、意識の深層を透視したことで、従来の仏教説話集にはない新鮮さがある。