作者は、
近世、
寛文4年に本書が『鴨長明海道記』として、
慶長2年の
細川幽斎の跋を加えて上梓されていることから、古くから
鴨長明と考えられてきたが、鴨長明の没年と本書の成立に齟齬をきたすため、鴨長明説は否定されている。作者は漢籍や和歌の道に通じた人物であることから、
源光行を作者とする説もあるが、その経歴と齟齬することから、懐疑的な見方が大勢を占めている。ただし、本書の一部に虚構を想定するならば、源光行であってもおかしくはない。また、
藤原秀能を作者とする説もある。近年では、
承久の乱で犠牲になった
葉室宗行を特に悼み、さらに承久の乱により落魄したかのような記述から、宗行の兄弟である下野守従五位下行長を作者とする説もでている。下野守従五位下行長は、『
平家物語』作者とされる信濃前司行長に比定されている人物で、本書の作者であってもおかしくはない。いずれの説にせよ、作者を特定するには決め手に欠けるため、とりあえずは作者未詳とする他なく、今後の研究が待たれる。